【基礎】iDeCoとは?

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金のことで、英語表記のindividual-type Defined Contribution pension planの単語の一部をとったものです。

どうしてiDeCoが始まったのでしょうか?

もともと会社員の年金には国民年金や厚生年金からなる公的年金のほかに、企業が独自に採用する企業年金制度がありました。その中の一つとして、将来受け取る年金額が確定している確定給付型の企業年金がありましたが、景気や運用状況の悪化から、想定していた通りの運用ができなくなってきました。

そこで代わりの制度として導入され始めたのが、将来受け取る年金額を確定する「確定給付型」ではなく、企業が拠出する掛け金を確定して運用は自分で行う「確定拠出年金」でした。

2001年に始まったこの確定拠出年金は企業単位で加入する企業型と、個人が加入する個人型に分かれています。
個人型は2017年に加入できる対象者が拡大したことで、注目を浴びるようになりました。

iDeCoの3つのメリット

iDeCoは老後の資金を形成するために導入された私的年金制度の1つで20歳から60歳までの人が加入できます。自分で申し込むことでiDeCoの専用口座を開設し、自分で掛け金を拠出し、自分で運用方法を選びます。これは、預金や保険などの元本保証型商品や、株式や債券などを対象にした投資信託などから自分で運用商品を選択し、配分割合を決定して運用していくことになります。

iDeCoがどんな制度なのかを知るために、3つのメリットを紹介していきます。

・掛け金が所得控除の対象

iDeCoは月5,000円から掛け金を選択することができますが、その拠出する額が所得税上の所得控除の対象になります。

会社員の方で簡単に説明します。

税金の計算は、給与収入から給与所得控除と呼ばれる年収に対して決まっている会社員の経費のようなものを引いた後、さらに各種所得控除を引いたものに対して、税率をかけて計算されます。

つまり、この所得控除額が大きい方が税金は少なくて済むのですが、iDeCoの掛金はこの所得控除の対象となるのです。

掛け金によってどれくらいの節税ができるのかはこちらの公式サイトでシミュレーションをすることができます。
かんたん税制優遇シミュレーション|イデコ公式サイト|老後のためにいまできること、iDeCo|国民年金基金連合会

また、掛け金はいくらでも出せるわけではなく、加入資格によって上限額が決まっています。詳しくはこちらで見てみてください。→アートボード 1

・運用益も非課税

通常、投資信託や預貯金等で運用して利益が出た場合、その利益には20.315%の税金が課税されます。これがiDeCoでは税金がかからないのです。

具体例で見てみます。

・拠出合計額100万円 → 運用結果110万円

・利益:    110万円ー100万円=10万円

・税金:    10万円×20.315%=20,315円

・手元の金額: 10万円ー20,315円=79,685円

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・iDeCoなら   10万円が手元に残る

自分で拠出した合計額が100万円、運用した結果それが110万円になったとします。この110万円-100万円の差額である10万円が利益になりますので、これに20.315%の税金がかかります。

そうすると、10万円×20.315%=20,315円が税金で引かれ、手元に残るのは79,685円となります。

これがiDeCoだとまるまる10万円が手元に残るというわけです。

・受取時にも控除の対象

iDeCoでは原則、60歳以降70歳までに運用したお金を受け取り始めることになっています。通常、お金を受け取るときにも税金がかかるのですが、iDeCoには税制上の優遇があり、一定額までなら税金がかかりません。

受け取り方法は3つの方法が選択でき、それぞれに税制上の優遇があります。

iDeCoを年金で受け取る場合は、5年以上20年以下で選択します。

  1.  一時金(一括)で受け取り      →退職所得控除が適用
  2.  年金(分割)で受け取り       →公的年金等控除が適用
  3.  一部を一時金、残りを年金で受け取り →退職所得控除+公的年金等控除が適用

一時金で受け取る場合

一時金で受け取る場合は、退職所得という扱いになり、退職所得控除が適用されます。また、他の所得とは分けて課税される分離課税になります。

退職所得の金額=(収入金額ー退職所得控除)×1/2      で計算されます。

退職所得控除額は下記の表の通りです。

掛け金をかけた年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 掛け金をかけた年数(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (掛け金をかけた年数 – 20年)

年金で受け取る場合

年金で受け取る場合は、雑所得の扱いになり、公的年金等控除が適用されます。この場合は、他の所得と合算して課税される総合課税になります。

雑所得=年金収入ー公的年金等控除額      で計算されます。

公的年金等控除額の計算は下記の通りです。

*公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合

65歳未満の場合                        (単位:円)

年金収入金額控除額
60万未満60万
60万超〜130万未満年金額ー60万
130万以上〜410万未満年金額*75%ー27.5万
410万以上〜770万未満年金額*85%ー68.5万
770万以上〜1000万未満年金額*95%ー145.5万
1000万以上年金額*100%ー195.5万

65歳以上の場合                        (単位:円)

年金収入金額控除額
110万未満110万
110万超〜330万未満年金額ー110万
330万以上〜410万未満年金額*75%ー27.5万
410万以上〜770万未満年金額*85%ー68.5万
770万以上〜1000万未満年金額*95%ー145.5万
1000万以上年金額*100%ー195.5万

iDeCoを始める前に知っておきたい注意点

・早くとも60歳までは引き出せない

iDeCoは豊かな老後の生活を送るための資産形成方法として導入されたものなので、原則60歳までは引き出しができません。つまり、何かまとまったお金が必要になったからと言って途中で引き出すことはできないのです。

さらに、細かい話になると、加入期間が10年に満たない場合は引き出しが60歳よりも遅くなります。

・元本割れすることもある

自分で掛け金を拠出し、自分で運用方法を選ぶiDeCoでは、運用結果によっては拠出した金額を下回ることもあります。

つまり、資産運用の成果次第で、60歳以降に受け取る老齢給付金の額が増えることもあれば、場合によっては減ってしまうこともある制度だということをよく理解しておきましょう。

・手数料がかかる

拠出時・運用期間中・受取時と税制上のメリットがあるiDeCoですが、いくつか手数料がかかります。

加入・移管時手数料

iDeCoを始める際には申し込みが必要となりますが、その加入時(または企業型確定拠出年金を行ってた人が退職などの理由で個人型に移管する場合は移管時)に1回きりの手数料が2,829円(税込)がかかります。これは国民年金基金連合会に支払う手数料なので、どこの金融機関を選んでも同じ金額になります。

口座管理手数料

運用期間中にかかる費用として、口座管理手数料があります。
一律、国民年金基金連合会に支払う手数料として納付ごとに105円があり、信託銀行に支払う月額66円を含めると合計で171円になります。
さらに、iDeCo取り扱う金融機関を運営管理機関と言いますが、運営管理機関に対しても手数料を支払います。こちらは金融機関によって異なります。

運用管理費用(信託報酬)

iDeCoでは投資対象商品として、定期預金、保険、投資信託などが選べます。信託報酬は定期預金や保険といった元本確保型の商品にはかかりませんが、投資信託を選択した場合、保有している間に口座管理手数料とは別に、運用管理費用(信託報酬)がかかります。

iDeCoの対象が拡大

従来、iDeCoは自営業者や企業年金のない会社員が加入対象でした。

それが、2017年1月には企業年金のある会社員、公務員、専業主婦やパート社員にも対象が拡大して、iDeCoに加入できるようになりました。
さらに、2020年(令和2年)の税制改正によって、会社員の方がもっと加入しやすくなりました。

それは2017年に対象が拡大した「企業年金のある会社員」は条件がついていたからです。「企業型確定拠出年金に加入している会社員の方は労使合意に基づく規約がある場合はiDeCoに加入できる」と言う条件があったため、実際に加入できる人は限定されていました。

今回の改正によって、従業員本人が望めばiDeCoに加入できるようになりました。

まとめ:税制を味方につけて賢く運用しよう!

公的年金でもiDeCoのような私的年金でも、運用して増えた分に関しては、運用時や受け取り時などに通常は税金がかかってきます。
それを、iDeCoのように税金にメリットがある仕組みを利用することで、賢く効率的にお金を増やしていくことができるようになります。

せっかく門戸が開いている制度ですから、上手に活用してみましょう!

(マネーroom編集部)

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