【基礎】3つのNISA制度の違いは?
通常であれば、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売った時に得られた利益や受け取った配当に対して20%*の税金がかかります。
*以下、復興特別所得税を割愛して、税率を20%として説明しています。
NISAは、開設した「NISA口座」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度のことを言います。
イギリスにISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)という制度があり、それをモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がつけられました。2014年から始まった制度です。
NISAの3つの種類
実はNISAと名前のつく制度は3つあります。
背景としては2014年にNISAが始まり、2016年に未成年を対象にしたジュニアNISAが、2018年には”つみたてNISA”というように順次始まっていきました。
どれも税金がかからない制度であることには変わりないのですが、それぞれ対象や仕組みが少しずつ異なりますのでそれぞれ概要を見てみましょう。
なお、現状は下記の通りとなりますが、法改正により一般NISAは2024年から新NISAに移行、ジュニアNISAは2023年で終了することとなりました。
※2014年に始まった元祖NISA制度を以後「一般NISA」と記載します。
一般NISA | ジュニアNISA | つみたてNISA | |
利用できる人 | 日本在住の20歳以上 | 日本在住の0~19歳 | 日本在住の20歳以上 |
非課税の期間 | 5年間 | 5年間 | 20年間 |
1年の非課税上限(非課税投資枠) | 120万円(5年間で最大600万円)*2015年以前は100万円だった | 80万円 | 40万円(20年間で最大800万円) |
非課税対象 | 株式・投資信託から得られる配当金・分配金・譲渡益 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 | 一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益 |
投資対象商品 | 株式・投資信託・ETF・REITなど | 株式・投資信託・ETF・REITなど | 国が定めた基準を満たす投資信託・ETF |
投資可能期間 | 2014年~2023年 | 2016年~2023年 | 2018年〜2037年*法改正により2042年まで延長 |
つみたてNISAができた背景
成人した社会人の場合、利用できるのは一般NISAか”つみたて”NISAとなります。
もともと国がこうした税制優遇制度をスタートしたのも、今後ますます自助努力が必要となってくる20~40代の現役世代に資産形成をして欲しいと考えていたからでした。
その一方で、一般NISAしかなかった頃、実際にこの制度を利用しているのは60代や70代のお金に余裕のある層だということがわかりました。そこで、若い世代でも少額でコツコツと積み立てを継続することで比較的高い確率で資産を増やしていくことができる”つみたてNISA”が創設されたのでした。
次は投資初心者向けである”つみたてNISA”について説明していきます。
つみたてNISAの5つのメリット
“つみたてNISA”を利用するメリットを見てみましょう。
・最長20年間非課税
“つみたてNISA”では値上がりした後に売却して得た利益は、購入した年から数えて20年間課税されません。20年経った後は、NISA口座以外の一般の口座に払い出しがされます。
現在ではこの”つみたてNISA”を利用できるのが2037年までとなっていますが、法改正により5年延長されて2042年までとなりましたので、2042年までは投資信託を購入できることになります。そして2042年に購入した投資信託の利益は20年間、つまり2061年まで課税されないことになります。
・毎年40万円まで非課税
年間で40万円まで投資信託の利益に対して非課税になります。
例えば、1年間で元手40万円で運用した投資信託が50万円になったとします。このとき、10万円の利益が出ているので、通常であれば10万円に対して20%の税金がかかりますので、10万円×20%=2万円が税金として引かれ、手元に残るのは8万円となります。これがNISA制度であればまるまる10万円が手元に残るということです。
また、つみたてNISAは20年非課税ですので、20年の長期でみてみると恩恵がもっと大きいことは明らかです。20年後にもし100万円になっていたとしたら、60万円の利益がまるまる手元に残るわけです。
・購入時手数料が無料
投資信託を購入するときは、通常、販売会社となる証券会社、銀行、信用金庫、保険会社などを通して購入することになります。この販売会社となる金融機関に手数料を支払うのが通常ですが、”つみたてNISA”ではこれが無料になります。
・少額から始められる
“つみたてNISA”では少額から始められることが特徴です。
ネット証券では100円から、メガバンクなどでも1000円から積立ができます。これなら気軽に始められそうですね。
・国が定めた基準を満たしている商品のみに限られている
“つみたてNISA”の対象商品に「国が定めた基準を満たす投資信託・ETF」と記載しましたが、これは”つみたてNISA”が長期間積立投資をすることを前提としているので、それに見合った商品のみを対象商品としています。
具体的には、
・販売手数料が0円であること
・信託報酬(平たく言うと運用している最中に差し引かれる運用管理費用)も低いこと
・頻繁に分配金が支払われないこと
などがあげられます。
ただし、国が定めた基準を満たしているからと言って、元本が保証されるとか損をしないということではない点については理解しておきましょう。
NISA全般の注意点
NISAを始める前に、知っておきたい点をいくつかお伝えしておきます。
・一般NISAと”つみたてNISA”の併用はできない
まず、一般NISAと”つみたてNISA”はどちらか一方しか利用できません。非課税の上限額や運用年数が異なる他、投資スタイルも一般NISAの場合は一括投資も積立投資もできますが、”つみたてNISA”は積み立て投資のみになりますので、どちらが向いているかを検討しておきましょう。また、年単位で一般NISAか”つみたてNISA”かを変更することは可能です。
・1人1口座
NISAを始める場合、金融機関に専用のNISA口座(非課税投資専用口座)を開きます。このNISA口座は1人につき1口座と決まっているので、重複して口座を開設することができません。どの金融機関で口座を開くのかは事前にある程度検討しておいたほうが良いでしょう。
ただし、口座開設後も1年単位で金融機関の変更をすることは可能です。
・金融機関ごとに取扱商品が異なる
私たちが日ごろ食料品を買うスーパーが、お店によって取り扱う品揃えが異なるように、金融機関によっても取り扱う投資信託が異なります(2020年4月1日時点で、対象商品は181本となっています)。いざNISA口座を開いてみたら、買いたい商品がなかったということにならないように気をつけておきましょう。
また、一般NISAにおいては同じ商品でも取扱手数料が金融機関によって異なる可能性がありますので、そこも注意したいポイントです。
・値下がりしている場合はロールオーバーをしないと不利
まず、ロールオーバーについてです。
一般NISAの非課税期間は5年となっています。この5年間の非課税期間が終了した後でも、翌年のNISAの非課税枠に移すことで、再度5年間非課税で運用することができます。これをロールオーバーといいます。
5年間の非課税期間が終わった後は、
①売却する
②(NISA口座ではない)課税口座に移す
③ロールオーバーする
が選択肢となります。
売却時等の利益が非課税になることが税制上のメリットであるにもかかわらず、5年後に値下がりしていたのであれば、税制上の恩恵が受けられませんので、ロールオーバーがおすすめです。
まとめ:投資初心者向けのつみたてNISAを利用してみよう!
国が推進しているNISA制度。特に、”つみたてNISA”はまとまった資金がなくても少額から始められ、長期にコツコツ積み立てることで運用成果を出しやすい制度です。せっかくなら税金面で優遇がある制度をいまいちど活用してみるといいでしょう。
また、NISAは同じく税制優遇制度があるiDeCoと比較されやすいですが、iDeCoについてはリンク先でご確認ください。
(マネーroom編集部)
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